「あ、つい……」
「何が熱い?」
「……やっ、……あっ!、いうわけ、っ……ないだろ……」
「言えないとこのまま」
そう耳元で囁いてやると、三井はぐうっと下唇を固く結ぶ。いやいやと左右に顔を振るけれど、流川は敢えてやわい律動を繰り返した。
三井の好きなところに、届きそうで、届かない。
「あっ、や、だあ……も、いじわる……すんな」
「何が欲しいのか、センパイが言えないから。オレもいじわるしてるわけじゃない」
「……っ……」
琥珀色の瞳を彷徨わせて、三井の目尻に涙が溜まっていく。やっぱりこの人はよく泣く人だ。バスケがしたいと泣いて、自分の歯がゆさに悔し泣きして、勝利の喜びに泣いて。今は本音と建前の乖離に、湧き上がる羞恥心に耐えきれず泣いている。その様子は流川の良心が少しばかり痛むが、彼がちゃんといえるまではこのままだ。
「……るかわ、の……」
「オレの、何?」
耳を寄せないと聞こえないくらいの声量で、三井は呟いた。
「るかわの……ちんこ、あつくて……かたいの、を……」
「……それをどうしてほしいの?」
涼しそうな表情を貼り付けていたが、内心はぐうっと鳴りそうになる喉をころして、流川は奥歯を噛みしめた。試合中に使う部位とは違う下腹のあたりに力を入れる。
そうやって気を張っていないと流されてしまいそうになるほど、三井の中は熱くて絶妙な加減で流川自身を締め付けてくる。そんな流川の内心など露知らず、三井の顔は可哀想なくらい涙でぐしゃぐしゃになっていた。
「……っ、流川の……ちんちん、で……もっと、ぐちゃぐちゃにして、ほしくて……!」
「……っ!」
「アッ!……ゃ、あ……いきな、り……奥まで……ンンッ!」
血管が浮き出た、猛々しい流川の剛直が三井の後孔……最奥のほうへずぶずぶと入っていく。待ちわびていたように、三井の内壁が蠕動するように波打った。
「も、やだ……ひ、あ……た、すけて……」
か細い声で、震える右手を縋るように伸ばされる。
涙でどろどろになってしまう行為をしているのは流川本人だが、その本人に向かって助けを乞うように三井が手を伸ばしてくる。
「っ……、せん、ぱい、……!」
「んっ!やぁ、だ!……おく、こわい……た、すけて……」
愛しいから、やさしくして甘やかしてやりたい。
でもそれと同じくらいに、もっとひどくして泣かせてみたいという気持ちも湧き上がってくる。
自分の完全なる支配下において、屈服させたい。
そんな、雄としての本能。
どんなに嫌だと泣かれても、離せない、離したくない。自分の舌で、手で、昂ぶった性器で貫いて善がらせたい。それは、彼に対する男としての尊厳を奪うものだったとしても、この激情は抑えられそうになかった。
「……センパイ」
流川はそんな葛藤に耐えながら、ずりずりと床を擦っていた三井の後頭部の後ろに手のひらを差し込んだ。
「……ん、……るか、わ……?」
不思議そうに、涙のうかんだ瞳でこちらを伺う三井の頬をもう片方の手でするり、と撫でてやる。
そして、再度三井の最奥めがけて、熱く反り返った熱棒を穿った。
その瞬間、三井の身体がびくんと痙攣する。
「んあっ!?やっ……も、やだ……やめ……やだあああ……こわ、い……いた、い」
「……ッ、せんぱ、い……もうすこし、だから……ッ……」
「やだ、やだあ……こわい……」
突然訪れる痛覚と同時に感じる甘痒い快感に、三井の視界がぱちぱちと火花をちらしたように点滅する。ぐずぐず、と琥珀色の綺麗な目から零れ続ける液体を、流川は舌で掬い取った。
「も、や……イ、くっ、ぅ……!!」
流川がごり、っと前立腺を擦りこんだ後、最奥ですべてを解き放つ。
「……ッ、……はあ……」
流川の血液の鼓動と同じ脈動で最奥に吐き出される精液を感じるたびに、三井の身体はびくん、びくんと小さく反応する。
彼を押し倒したまま、流川は、三井の襟ぐりのあたりに顔を埋めて、熱い吐息をついた。
「……流川、中に……出すなっていっただろ……」
「……ごめんなさい」
「返事だけは良いんだけどな……毎回毎回よお……」
「オレが後始末するから」
「いい、自分でやる。……丁度トイレいきたかったし」
ベッドに寝そべっていた三井が動き出そうとする。その身体を流川がしっと捕まえると、三井は不思議そうに動きを止めた。
「……ん?」
「…………」
「あのー……流川サン?」
「オレがやる」
「いや、マジでいいんだって!つかその前にトイレ行きてえし……」
「……腹痛いんすか?」
「ちげーよ、つか腹痛くなるって分かってんなら中出すなっつーの!……小便だよ……」
生理現象といえども、セックスのすぐ後に言うのは気恥ずかしいのか、頬を薄く染めながら三井が言い返してくる。もぞもぞと内股を擦り合わせているのは、尿意に耐えているからなのか。そう理解した瞬間、流川は彼の身体を抱きかかえて身動きを取れなくしたまま、奥にある洋式トイレへと歩き出していた。
「は?ちょ……何してんだ」
「オレが見ててあげるっす」
「……は!?」
「どうせ腰が立たないと思うし。そのまま一人でトイレの個室なんて入ったら危ねーから」
「い、いや……百歩譲っても、トイレの個室に立たせてもらえるまでしてもらったら、オレは一人で全然大丈夫だけど?!ちょ、はなせよ!!」
「遠慮しないで」
「してねえわ!!」
三井の悲痛な叫びもむなしく、流川は両腕に三井を抱えたまま、足で器用にトイレのドアを開ける。洋式のその蓋を開けて、三井を後ろからぐっと抱きしめたままその瞬間を待つ。
「ほんと……ほんと、やめろって……ッ」
三井の声が涙混じりになる。しかし、流川は無情にもその腕を離そうとしなかった。
「駄目」
「……アッ……も……だ、め……」
鈴口からじわり、と粒になって水分が浮き出る。
「出して。全部見ててあげるから」
「アッ……アアアッ……」
ぽたり、ぽたり……と雫が零れ出し、その雫は途端に勢いをもってじょろじょろと流れ出した。黄金色のそれが、ぼたぼたとトイレの中にこぼれ落ちていく。
きたないもののはずのその光景を見て、流川は何故か背中からせり上がるほどのぞくぞくとした興奮を抑えることが出来なかった。三井が一番見せたくなかったであろう、自らの排泄行為を自分は無理やりさせている。彼のこんな恥ずかしい所を見たのは、きっと自分だけだ。かつて、これほどまでに興奮を掻き立てられたのは初めてだった。
「あっ……とまんな……い……」
「我慢してたんでしょ?……全部出していい」
三井の下腹をぐっと抑えてやると、より一層勢いが強くなる。しかしそれも、十秒ほど経つと、少しずつ勢いが弱くなり、そして水滴がぽた、ぽた……と落ちるだけになってくる。流川はその萎えきった三井の陰茎をぷるん、と上下に二回ほど振ってやり、丁寧にトイレットペーパーで残滓を拭き取ってやった。
「……も……ほんっとお前、最低……」
耳まで真っ赤にして、三井が涙目で流川を睨む。
彼のこめかみに小さく口付けを落として、流川は再び滾った自らの下半身を彼の太腿裏に押し付けたのだった。
END