かみさまが愛をつむいだ

「えっと、このあたりに座ったらいいのかしら?」「……ス」  こくん、と言葉少なげに頷かれる。スマートフォンを三脚に設置している黒髪の前髪がさらりと重力にならって落ちるのを見ながら、私はなんとなく、少しだけ緊張していた。 …

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ベテルギウス

空にある何かを見つめてたらそれは星だって君が教えてくれた。  真昼の国際空港のターミナルは、硝子越しに燦々と太陽の光が差し込んでくる。出国手続きを終えた搭乗待合室のベンチに座って、そんな中で、どうしてか自分は夜空の曲を歌…

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カエデ式NO.1証明理論

 最低最悪の試合だ。  プラチナブロンドの髪先から汗が滴り落ちるのを忌々しく振り払い、デイヴィット・フォスターは大きく舌打ちをしてタオルをかぶった。  スコールで泥だらけになった道端に捨てられているゴシップ誌にでもなった…

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ヒサシ緊急救出事件簿

 午後からの練習が終わった夕方。オレンジ色の夕陽が差し込む中、ロッカールームはガヤガヤと心地よい喧噪に包まれている。  さっきのクイックはこうしたほうがよかった。アリウープパスのタイミング。さっきのフローターにはやられた…

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続く日々も君とありたい

「お、ま〜た白髪みっけ」  親指と人差し指で、やわく引っ張られた髪の毛の方向に顔を向ける。甘栗を煮詰めたような瞳を細めて笑うそのひとの目尻には、深い皺が刻まれている。白髪の数なんてどっこいどっこいじゃないかという言葉は、…

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続・28.5cmのシンデレラ

 桃栗三年、柿八年。 ローマも一日にして成らず――だったように、三井の教師としての貫禄も一朝一夕で形作られたわけではない。  若いなりに教師として生徒に尊敬されること。顧問として湘北高校女子バスケ部を勝利へと導くこと。い…

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春ごといなくなる人へ

 江ノ島方向から吹いてくる強い風に黒髪がぶわっとあおられる。目の前をひらひらと舞い落ちるピンク色の欠片。 薄く靄がかった春特有の薄い水色の空に舞っていくその花びらを、目線で追いかける。 「うわ!すげー……桜吹雪ってこーゆ…

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Subtitleなんてなくても

 冬の冷たい空気の中、駅前のバスケットコートに向かう自転車。後ろの荷台は、小さな段差でもおかしくて笑えるくらいに跳ねる。 前でペダルを漕いでいる後輩の長い黒髪がはらはらと風に舞っているのを見ながら、三井は片手で右耳を押さ…

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why don’t you teach, brother?

 うだるような残暑が残る夕方、駅で弟を見かけたのは本当に偶然だった。  平均的な身長よりあたま一つ分飛び抜けている後ろ姿。無造作な黒髪が、到着電車の吹き込んでくる風になびいて毛先が揺れる。 艶やかな黒髪は私共々、親譲り。…

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星を掬う

「二十万分の一、なんだってよ」「何が」「人が、人生の内で何かしら接点を持つ人間に出会う確率」  時折この人は、哲学者みたいなことを言う。  あの頃。いつも体育館ではしゃいで、ガハハと下品に笑って、バカみたいに大騒ぎしてい…

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