青春色エール
校庭のスピーカーから流れる賑やかなBGM。ホイッスルの音や生徒の歓声が遠くに聴こえる。 紅組、がんばれ。白組、負けるな。日本の運動会の歴史の中で途絶えたことがないであろう『天国と地獄』の軽やかなアップテンポから『トル…
続きを読む →校庭のスピーカーから流れる賑やかなBGM。ホイッスルの音や生徒の歓声が遠くに聴こえる。 紅組、がんばれ。白組、負けるな。日本の運動会の歴史の中で途絶えたことがないであろう『天国と地獄』の軽やかなアップテンポから『トル…
続きを読む →あの流川くんなら、喜多川歌麿だって流川くんをモデルに美人画を描いただろうわ。そう語ったのは流川楓親衛隊、№1114のとある女子生徒(美術部所属)の弁である。 ええ、きっと描くわ。女性じゃなくても流川くんの見返り姿なん…
続きを読む →バスケの試合の終わりは、勝っても負けてもいつだって唐突だ。 今年の夏、家のリビングのテレビに映っていた夏の高校野球大会。 勝ったチームの校歌を聴きながら負けたチームが整列して俯きながら涙を流している。「楓も勝ったら校…
続きを読む →経年劣化で少し色褪せたアナログの現像写真には、仏頂面で黒いネズミの耳を付けた五歳児が写っている。その横には、彼と正反対の満面の笑みを携えた姉。おそらく小学生低学年。 愛と夢とファンタジーを謳った《うたった》テーマパーク…
続きを読む →センター試験二日目の早朝。 晴天に恵まれた空気はキンキンに冷え、鼻から全身をすっきりとリフレッシュさせてくれるように思える。 昨日と今日。あと一日、今日も頑張るだけ……。緊張で固くなる自身の身体を鼓舞するようゆっくり深…
続きを読む →番組の途中ですが、臨時ニュースをお届けいたします。 部活終わりの夕方頃、横浜市内の某タワーマンション上階、三井寿さん(18)の部屋内で、二つ年下である男子高校生に押し倒される事件がありました。 押し倒した側の後輩は、…
続きを読む →暴力的なまでの高揚感、というものがある。 流川は、肌がびりびりと痺れるこの試合前の空気が好きだ。 満員御礼のアリーナは、ひとつの大きな生き物のよう。日本を応援するため全国から駆けつけてくれたブースターのざわめきと期待…
続きを読む →「カロリーメイト」「んあ?」 脳内で組み立てられる『カロリーメイト、ありがとうございました』という日本語は、自分の喉に詰まって単語だけがぽろり、と零れ落ちた。 いつだって自分はそうだ。頭の中で考えていることの、二割も…
続きを読む →「昨日夢見たんだけど、自分が死ぬ夢だったんだよ」 この人の唐突っぷりは、一番いい所でプツンと試合中継が終わる民法テレビ放送といい勝負をする。流川はこっそりそう思っている。 自主練を終えた部室には二人だけで、先に帰った…
続きを読む →なんだこれ。 宮城リョータは自分の目を疑った。自分の目が長時間のブルーライトで疲れたのかと思い、ぐぐっと眉間を指のはらでほぐす。 きっと幻覚を見たんだ、そうに違いない。頭の中で宮城は言い聞かせた。心臓はバクバクほどで…
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